思考断片
日本生まれの餡が、和服から洋服に着替えたとき...
日本のベーカリーもだいぶ変わった。パン職人の社会的地位も向上し、パンの世界コンクールで、日本人が活躍する場面も増えている。このパン業界にとって好ましい状況の中、進んできたのは、ベーカリーの欧風化だ。フランスやドイツ、オーストリアなどのベーカリーがそのまま日本の街角に現れたかと思うような店が、都会だけではなく、郊外の住宅街にも当たり前のように見られるようになった。
それはそれで好ましいことなのだが、最近私は、昔ながらの日本生まれのパンが愛おしくて仕方がない。あんぱんは、日本が生んだ傑作だ。日本の餡が西洋の芳醇な発酵の香りに優しく包まれた時、それまでの饅頭とは全く違う新しい食べ物が生まれた。日本生まれの餡が、和服から洋服に着替えたとき、新たな可能性が無限に広がった。
メロンパンにしろ、ジャムパンにしろ、そして、コッペパンにしろ、甘食にしろ、それぞれに、興味深いストーリーがあるに違いない。これほどまでに愛おしく思える珠玉のパンたちを生み出してきた日本のパン職人の方々に、心から敬意を表したい。
[2018/02/20]