思考断片
普通の人が普通に食べて、普通に満足し...
世の中には流行り廃りというものがあるが、パンや菓子についても事情は同じだ。エッグタルト、カヌレ、ワッフル、ベーグル等々、過去にブームになった商品が、頭の中のスクリーンに、スラドショーのように次々と映し出される。
「一過性のブームにはしたくない」という声をよく聞く。私もそう思う。過度の商業主義が支配する今の世の中では、駆け巡る情報が、利益を生み出す方向にのみ誘導される傾向が強く、粗悪品を生み出す大きな原因になっているのは確かだ。
しかし、例えば、カヌレは、今も、いくつかのベーカリーや洋菓子店で、真面目に製造され、真面目なファンに脈々と消費されている。いまや、カヌレについては、粗悪品が出回る余地はなくなっているだろう。
「一過性のブームにはしたくない」という人達の口から次に出てくるのは、「食文化として定着させたい」という言葉だ。私の口からもまったく同じせりふが出てくる。
しかし、例えば、カヌレは、今の時点では、日本の食文化と呼ぶには、関わっている人の数が、おそらく少なすぎる。そして、おそらく、日本の食文化と呼ぶには、それが消費される時の「普通度」が低すぎる。
普通の人が普通に食べて、普通に満足し、そのことによって、一切の優越感を感じない、というのが、食文化として定着した時の状況だ。ひょっとしたら、ベーグルはこの状況に近づいてきたかな、と思う。
[2014/05/13]