パンあれこれ
大きく進化したレーズンパンの製法
僕が子供のころのレーズンパンというと、パンの部分が少しぱさぱさして、ミミの部分には、レーズンがいくつかめり込んできていて、その部分が苦かった。少なくてもグルメという言葉は、似つかわしくなかった。
本誌今月号の特集で、セントルザ・ベーカリー青山店の「究極のレーズン食パン」を取材させて頂き、子供のころの思い出からは隔世の感を禁じ得なかった。カリフォルニア・レーズン協会が毎年開催しているレーズンパンの新製品開発コンテストに出品されるレーズンパンも、昔のものとは全く別物だ。
ポイントの一つはレーズンの下処理だという。定番のラム酒漬けの他にも、様々な種類のワインに漬け込んだり、日本酒に浸したりして、様々な形でおいしさが追及されている。中には甘酒や麹に漬け込むレシピもあるそうだ。
レーズンには独特のえぐみがあるが、僕が子供のころ食べたレーズンパンは、レーズンが下処理なしでそのまま練り込まれていたのかも知れない。肉に下味を付けずにそのまま調理するようなもので、肉独特の臭みが好きだという人には好まれるが、そうでない人からは敬遠される、そんな感じだったのかも知れない。
大きく進化したレーズンパンの製法は、多くのシェフたちの努力の賜物だ。セントルザ・ベーカリー青山店の「究極のレーズン食パン」は、5種類のレーズンに、それぞれの特性に合わせて違う下処理を施し、それらを多加水の生地に大量に手で練り込んでいるという。2斤サイズで3780円のレーズン食パンが、あっという間に売り切れる。
[2022/04/26]